日本酒パック(パック酒)10商品飲み比べ! 「灘」と「伏見」で、どんな味の違いがある?
日本酒党の心の相棒「パック酒」。最近では、名だたる日本酒コンテストで高い評価を受けるものが出てくるなど、「パック酒=質より量」というイメージも変わりつつあるようです。そこで今回は、定番銘柄10商品のパック入り日本酒を飲み比べ! 温度帯も変えて味わってみました。
紙パック入りの日本酒、味は瓶入りと同じ?
大手日本酒メーカー「月桂冠」お客様相談室に聞いてみたところ、
「同じ銘柄であれば、基本的に瓶詰め商品と紙パック商品とでは中味は同じ酒質です」とのこと。
紙パック入りだから酒質が劣る、ということはないんですね~。安心安心。
飲み比べる日本酒パック(パック酒)は10種類
①菊正宗 キクマサピン
②日本盛 晩酌辛口
③白鶴 まる
④松竹梅 天(宝酒造)
⑤大関 のものも
⑥月桂冠 月
⑦黄桜 呑
⑧清洲城信長 ミニ 鬼ころし
⑨菊正宗 しぼりたてギンパック
⑩沢の鶴 米だけの酒
①・⑨菊正宗、②日本盛、③白鶴、⑤大関、⑩沢の鶴は「灘五郷」と呼ばれる兵庫県の灘一帯にある5つの酒造地に本拠地を置くメーカーです。宝酒造の④松竹梅「天」、⑥月桂冠、⑦黄桜の商品は京都の伏見で造られています。清州桜醸造⑧「清洲城信長 鬼ころし」は愛知県清須市で造られている日本酒です。
日本酒好きの間ではよく「灘の男酒、伏見の女酒」と言われるそうですが、本当にこの2つの地域では味の傾向が異なるのでしょうか? そのあたりも確かめていきます。
日本酒パック(パック酒)①|菊正宗 キクマサピン
分類:普通酒
アルコール分:14~15%未満
原材料:米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール
日本酒度:+3.5 酸度:1.3度
産地 :兵庫県
容量:900ml
価格:628円(税込)
編集部員E
パッケージがレトロで可愛いですね。
編集部員A
この「キクマサピン」もそうですが、今回飲み比べる10商品のうち9つがいわゆる「普通酒」で、吟醸酒や純米酒、本醸造酒といった「特定名称酒」に分類されない日本酒です。
編集部員S
普通酒はメーカーの稼ぎ頭なんだよね。大衆居酒屋でメニューに「酒」とだけ書かれているような日本酒です。
編集部員R
あら…。私パック酒飲むの今回が初めてですが、思っていた以上にまろやかで飲みやすいです。アルコール感がクッとくるのかと思いきや、それが全然ない。
編集部員A
おお、1発目から好反応。幸先いいですね。
編集部員S
やや辛口で淡麗と謳っているけど、甘く感じるなあ。
編集部員E
口当たりもすごく柔らかいですよね。
編集部員S
ただ燗つけると、途端にアルコールが立ってくるね。
編集部員E
ほんとだ。辛口感が際立ちます。
編集部員H
私は冷やで飲むほうが好きです。
みんなの感想
食中酒として:★★★☆☆
毎日飲みたい:★★★★☆
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日本酒パック(パック酒)②|日本盛 晩酌辛口
分類:普通酒
アルコール分:13~14%未満
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール、糖類、酸味料
日本酒度:+4.5 酸度:1.3度 アミノ酸度:1.2
産地 :兵庫県
容量:2L
価格:855円(税込)
編集部員A
次は菊正宗と同じ灘のメーカー、日本盛の「晩酌辛口」です。
編集部員H
さっきの「キクマサピン」に比べるとあっさりしていますね。
編集部員R
これ結構アルコールを感じます。飲んだときに口の中がキュッとなる。
編集部員S
僕はこういうタイプ好きだな。アルコール感があって、お酒を飲んでる感じがする。
編集部員E
程よい酸味もありますね。
編集部員S
不思議なことに食べ物と一緒に飲むと、水のように存在感が消えるよ。食事の邪魔をしない酒だ。
編集部員A
お燗にするとどうでしょう?
編集部員E
アルコールがさらに立って、なんだか焼酎のお湯割りっぽくなる。これも冷やのほうがいいんでは?
みんなの感想
食中酒として:★★★★☆
毎日飲みたい:★★★☆☆
日本酒パック(パック酒)③|白鶴 まる
分類:普通酒
アルコール分:13~14%未満
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール、糖類 / 酸味料
日本酒度:+1 酸度:1.2度 アミノ酸度:1.1
容量:500ml
価格:411円(税込)
編集部員A
次も灘を代表する酒造メーカー、白鶴の「まる」。日本で一番売れている日本酒です。
編集部員E
香りはあまり感じないけど、味が濃くてふくよか。
編集部員S
ああ、やっぱり「まる」。好きなんだよね~。甘くもないし酸っぱくもないんだけど、日本酒っぽくて旨味がある。
編集部員R
確かにおいしい。豊かな感じがします。
編集部員S
なにしろバランスがいいんだよ。
編集部員E
四の五の言わずに、これでいいじゃんって感じですね。飲み疲れもしなさそうだし。
編集部員A
やはり日本一売れてるだけのことはあるんですね。
編集部員H
燗をつけると香りがふわっと開いて、これもいいです。
みんなの感想
食中酒として:★★★★★
毎日飲みたい:★★★★★
日本酒パック(パック酒)④|松竹梅 天(宝酒造)
分類:普通酒
アルコール分:13~14%未満
原材料:米(国産)、米麹(国産米)、醸造アルコール、糖類/酸味料
日本酒度:+2 酸度:1.3度
産地 :京都府
容量:900ml
価格:617円(税込)
編集部員A
次は京都・伏見で造られている宝酒造の「松竹梅 天」です。
編集部員E
なんかね、お公家が飲んでいそうな味。
編集部員S
うん、公家っぽいねー。おめでたい席で飲むような上品な味です。パック酒っぽくない。
編集部員E
ちょっと華やかな酸味があるんですよ、吟醸寄りの。でも軽やかで。そこが公家っぽい。これを料理酒代わりに使うとバチが当たりそう。
編集部員A
その辺が伏見のお酒の特徴なんでしょうかね。お燗にするとどうですか?
編集部員R
あれ?なんか性格が変わったような…。
編集部員S
うん、急に旨味と酸味が立ってくるね。庶民っぽい味になった。
みんなの感想
食中酒として:★★★☆☆
毎日飲みたい:★★☆☆☆
日本酒パック(パック酒)⑤|大関 のものも
分類:普通酒
アルコール分:13%
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール、糖類/酸味料
日本酒度:+3 酸度:1.2度
産地 :兵庫県
容量:500ml
価格:393円(税込)
編集部員A
次は灘のメーカー、大関「のものも」です。
編集部員R
香りはあまりないですね。
編集部員S
でも米の味はしっかり感じる。灘のお酒だからか、さっき飲んだ「松竹梅 天」のようなみやびな味わいではないけど。
編集部員E
結構酸味もあるので、酸っぱい味の料理やお漬物に合うんでは?
編集部員H
ほんとだ。酸っぱい料理と一緒に飲むと甘味が感じられます。
編集部員R
お燗にすると急に香りが主張してきますね。ちょっときついかも。
編集部員S
うん、味も途端にベタっとするね。これは冷やで飲むのが良さそう。
みんなの感想
食中酒として:★★★☆☆
毎日飲みたい:★★★☆☆
日本酒パック(パック酒)⑥|月桂冠 月
分類:普通酒
アルコール分:13~14%未満
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
日本酒度:-1度 酸度:1.2度 アミノ酸度:1.2
産地 :京都府
容量:500ml
価格:411円(税込)
編集部員A
次は京都・伏見を代表する日本酒メーカー、月桂冠の「月」です。
編集部員S
うーむ、これも伏見の酒なだけあって公家っぽいね。こうして飲み比べると、灘と伏見の違いは明らかだな。水の違いなのかな? 伏見の酒のほうが一言でいうと高級感がある。
編集部員E
伏見のお酒は吟醸酒っぽさがありますよね。
編集部員R
確かにこの「月」も軽やかさや華やかさがあります。
編集部員E
糖類や酸味料を添加していないせいか、余韻は短いですね。すっと消える。この出過ぎない感じは日常酒として好ましいのでは?
編集部員H
お燗にしてもそんなにアルコール感がきつく出ません。
編集部員S
少し酸味は出て来るけど、べたつきもなくて美味しい。
みんなの感想
食中酒として:★★★★☆
毎日飲みたい:★★★★☆
日本酒パック(パック酒)⑦|黄桜 呑
分類:普通酒
アルコール分:14%
原材料:米(国産)、米麹(国産米)、醸造アルコール、糖類
日本酒度:-1 酸度:1.1 アミノ酸度:1.0
産地 :京都府
容量:900ml
価格:617円(税込)
編集部員A
次は黄桜の「呑(どん)」。見た目は大衆感ありますが、これも京都・伏見のお酒です。
編集部員H
パッケージに惑わされそうになるけど上品な味。
編集部員E
やっぱりこれもそこはかとなく公家感がありますね。柔らかな酸味と吟醸香を感じます。
編集部員S
いろんな食事に合いそうだし、飲み飽きしない感じ。そこは③白鶴「まる」に性格が似ているかも。
編集部員A
お燗にするとどうですか?
編集部員R
アルコールが遠慮なく出てきますね。目にしみる…。
編集部員S
味もちょっとべたつくかな。冷やで飲むのがいいね。
みんなの感想
食中酒として:★★★★★
毎日飲みたい:★★★☆☆
日本酒パック(パック酒)⑧|清洲城信長 ミニ 鬼ころし
分類:普通酒
アルコール分:14%未満
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール、糖類 / 酸味料
日本酒度:+1度 酸度:1.4度
産地 :愛知県
容量:180ml
価格:103円(税込)
編集部員A
続いては灘・伏見以外の土地の日本酒、愛知県清須市で造られている「清洲城信長 鬼ころし」です。「鬼ころし」という名前の日本酒は、実は全国各地にあるそうなんですが、スーパーやコンビニでよく見かけるのはこの清州桜醸造のミニパックものだと思います。
編集部員H
香りはほとんどしないですね。
編集部員S
これは旨味が濃いなあ。ガツンとくる。
編集部員R
味のいろいろな要素が強いですよね。まさに「鬼ころし」って感じ。
編集部員E
愛知のお酒だから、やっぱり味噌カツとか味噌おでんとか名古屋メシに合うんじゃない?
編集部員A
ああ、絶対合いますね。赤味噌や醤油を使った濃い味の料理に。
編集部員S
意外なことに燗をつけると急に大人しくなったよ。うまい。
編集部員E
私も結構このお燗好きです。
みんなの感想
食中酒として:★★★☆☆
毎日飲みたい:★★☆☆☆
日本酒パック(パック酒)⑨|菊正宗 しぼりたてギンパック
分類:普通酒
アルコール分:14~15%
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
日本酒度:+3
産地 :兵庫県
容量:1.8L
価格:1078円(税込)
編集部員A
次は「パック酒界の革命」と話題になった菊正宗の「しぼりたてギンパック」です。インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)でゴールドメダルを受賞したことでも注目されましたね。
編集部員H
え? これパック酒ですか? 香りがすごくフルーティー。
編集部員E
もはや香水。耳の裏につけたい。
編集部員S
そして旨いんだよ。一体どういうことなんだろう?
編集部員A
独自の新酵母(キクマサHA14酵母)により大吟醸のようなフルーティーな香りを引き出しているそうですよ。
編集部員E
ただ、これを毎日飲みたいかと聞かれるとちょっと違うかも。
編集部員S
そうね。食中酒にしては美味しすぎるんだよね。
編集部員R
料理っていうよりナッツとかフルーツとかのほうが合いそうです。
編集部員H
お燗にしてもそんなに味の雰囲気は変わりませんね。炭酸で割ったり、カクテルベースとしても使えそう。
みんなの感想
食中酒として:★★☆☆☆
毎日飲みたい:★★☆☆☆
日本酒パック(パック酒)⑩|沢の鶴 米だけの酒
分類:純米酒
アルコール分:14.5%
原材料:米(日本産)・米麹(日本産米)
精米歩合:麹米65%/掛米75%
日本酒度:+2.0 酸度:1.5 アミノ酸度:1.4
産地 :兵庫県
容量:1.8L
価格:1199円(税込)
編集部員A
最後は今回唯一「純米酒」に分類されるパック酒です。灘の日本酒メーカー、沢の鶴の「米だけの酒」です。
編集部員S
うん、まろやか。
編集部員E
口当たりはなめらかだけど、やっぱり灘のお酒って感じがする。旨味が強い。
編集部員S
後味がちょっとしつこいかな。
編集部員H
燗をつけると、さらにしつこさが気になりますね。
編集部員E
普通酒の場合は、そのくどさをいろいろ添加して調整しているんでしょうね。
編集部員R
でもパック酒で純米酒ってめずらしいし、原材料がシンプルなのは嬉しいです。
みんなの感想
食中酒として:★★★☆☆
毎日飲みたい:★★☆☆☆
日本酒パック(パック酒)、家飲みにおすすめなのはどれ?
編集部員S
断トツで「まる」。バランスがとにかく素晴らしい。燗でも冷やでも美味しいし。白鶴の技術力の高さがビシビシ感じられた。
編集部員E
私も「まる」に一票! ひとつも嫌なところが見当たらなかった。私これでいい、って思いました。
編集部員H
私は「キクマサピン」。シンプルで余計な味がしないのが好ましく、日本酒を飲みなれない私でも飲みやすかったです。
編集部員R
私は「菊正宗 しぼりたてギンパック」。一口目で美味しい!って思いました。明らかに他のパック酒にはないフルーティーな香りが好きです。
編集部員A
毎日飲むなら、私は月桂冠の「月」。食事の邪魔をしない、控えめで奥ゆかしい感じがいいなと思いました。
10銘柄の個性の違いもさることながら、「灘」と「伏見」の土地柄による味の傾向や方向性の違いも確認できた今回の飲み比べ。また、各メーカーが常に技術を磨き、時代に寄り添った「定番酒」を送り出そうと工夫していることも伺い知ることができました。パック酒、侮るなかれです。
今までパック酒売り場を素通りしていた方も、ぜひ一度手に取って飲んでみてはいかがでしょうか?
※記事中のコメントは個人の感想です。
※価格は酒類専門店の通販サイトで購入した金額です。
※記事の情報は2022年4月26日時点のものです。
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編集部員A
トップバッターは、1983年生まれのロングセラーブランド「キクマサピン」。紙パック入り日本酒の草分け的存在です。