【ウニクムの魅力と飲み方】世界的バーテンダーも惚れ込む“苦い酒”の正体とは?
独特の苦味が最大の特徴である薬草酒「ウニクム」。このハンガリー生まれのリキュールに、世界のトップバーテンダーたちが魅了されるのはなぜでしょうか? この苦さを家飲みで楽しむとしたら? 未知なる薬草酒「ウニクム」を日本で展開するお二人に、その魅力や飲み方を教えていただきました!
教えてくれたのはこの方々
田中 沙代子さん
国分グループ本社株式会社 商品開発部 開発二課
ハンガリー産のハーブ・リキュール「ウニクム」の日本における輸入・販売促進事業を担当。
レンドバイ・マルトンさん
東欧インターナショナル株式会社 代表取締役
ツヴァック社ウニクムを輸入する国分グループ本社とともに日本へのブランド展開を担当。
ハンガリーの国民酒「ウニクム」の魅力とは?
レンドバイ 生まれたときからずっと身近にあるお酒ですね。どこの家庭でもそうだと思います。僕の記憶では家族で集まってごちそうを食べた後に、「ちょっとウニクム飲もうか」という感じで飲むことが多かったです。
―ハンガリーでは一家に一本あるようなお酒なんですね。お二人は「ウニクム」のどういったところに魅力を感じていますか?
田中 やはり名前の語源にもなった「ユニークな味」の部分でしょうか。天然ハーブとスパイスを40種類以上使って醸し出される、やみつきになるような複雑な香りや苦味。しかも苦いだけじゃなくて、ちゃんと甘みもあって、そのバランスが絶妙だなと。そういった部分が他のものには変えがたい、魅惑のお酒だなと思っています。
レンドバイ そうですね。独特の苦味があるので、ハンガリーの若者も初めて飲んだときはびっくりする人もいます。正直言うと僕も20代のときはあまり飲んでいませんでした。でも、何年かぶりに飲んだらこの苦味が心地よく感じたんです。飲めば飲むほど、楽しみや深みが伝わってくるお酒なんですよね。
ウニクムの誕生と生い立ち
レンドバイ もともとウニクムは、ツヴァック家の祖先が1790年に主君の健康を願って造ったのがはじまりです。初めてこの薬草酒を飲んだ時の皇帝の言葉「Das ist ein UNICUM!(これは特別な味だ!)」から「ウニクム」という名前が生まれたと言われています。
今も当時と同じ原料と製法で造られていますが、そのレシピは家族の一部以外、一切明かされていません。
―200年以上も前のレシピと同じで、しかもその秘密が今日まで守られているってすごいですね。
レンドバイ 珍しいことだと思います。第二次世界大戦後の社会主義体制下でウニクムの工場も国営化されたのですが、家族の大切な秘密を守りたかったツヴァック一族はオリジナルのレシピを渡しませんでした。その後、ニューヨークに移っていたツヴァック・ピーテル氏が1970年代にヨーロッパに戻り、イタリアでウニクムの製造を開始。1990年代にはハンガリーの工場も復活させ、祖国での製造再開を叶えたのです。
―時代に翻弄されたお酒なんですね。でも、紆余曲折があったとはいえ、ハンガリーでこんなにも長くウニクムが飲まれ続けているのはなぜだと思いますか?
レンドバイ 1つはその歴史にあると思います。ウニクムはヨーロッパでもかなり古い歴史をもつハーブリキュールブランドです。特に東ヨーロッパでは、家族経営で1つのブランドが継続している事業はほとんどないので、特別なことです。
2つ目は、似たような製法を採るハーブリキュールが他にほとんどないこと。ウニクムは、ハーブとスパイスを使った蒸留酒と浸漬酒を並行して造り、それをミックスして樽で熟成させるという非常に珍しい方法で造られます。その結果として、あの独特のフレーバーや味わいが生まれるわけです。
3つ目は、神秘性です。今や世界中で知られるお酒でありながら、レシピが家族の一部にしか明かされていない。そういう部分があるからこそ“ハンガリーを代表する特別なお酒”という意識がハンガリーの人々の中にあるんだと思います。
ウニクムの飲み方、ハンガリーでは?
レンドバイ パブに行って飲むことが多いですね。キンキンに冷やしたものをショットで。あと、例えばビールを飲んでいるときに、気分転換として途中でウニクムを飲むこともあります。カフェではコーヒーと一緒に飲む人もいますよ。コーヒーに混ぜるんじゃなくて、交互に飲むんですけど。
ハンガリーでは最近カクテル文化が入ってきたばかりなので、ウニクムを何か別のもので割る飲み方はまだ定着していません。
―家で飲むことも?
レンドバイ はい。家族で集まるパーティーの時に、ウニクムで乾杯したり、食後に飲んだり。家で飲むんだったら、個人的にはショットで飲むより、ロックでゆっくり楽しむのが好きです。
ウニクムの飲み方、日本では?
田中 日本ではバーシーンで飲まれることが多いので、メインのお取引先はやはりバーであったりとか、そこに卸している業務用の酒販店さん。あとはECサイトでの販売が今は多いですね。どちらかといえばニッチな商品なので。
そもそも当社がウニクムを日本で展開しようと思ったのも、ビターズ文化とか苦味系のお酒に伸びしろがあると考えたからです。マーケットが小さい分、いろいろなことができる可能性を秘めていると思っています。
ウニクムは万人受けするタイプのお酒ではありませんが、やっぱり好きな人は好きなんですよね。玄人に刺さるというか、人によっては沼にハマるというか。世界的なバーテンダーでウニクムのアンバサダーにも就任している「Bar BenFiddich」の鹿山博康*さんも、当社が扱うずっと前からウニクムを愛用していらっしゃったようです。
―鹿山さんといえば、あるインタビューでウニクムをパクチーに例えていらっしゃったのが印象的でした。「パクチーが日本に入ってきたころは罰ゲームみたいだったけれど、今はパクチー好きもたくさんいる。だから、ウニクムも徐々に受け入れられていくだろう」と。
レンドバイ なるほど、確かに。僕も別のバーテンダーから聞いたのですが、カクテルを作る側からすると、甘味や酸味を出すための材料はたくさん選択肢があるけれども、苦味を出すための材料は非常に少ないと。もちろんビターズは他にもあるけれど、苦味のレベルも違えば、苦味の種類も違うし、天然であるかどうかという違いもある。加えてウニクムは、ハーブやスパイスによる香りも複雑でクオリティが高い。だからカクテル作りに非常に向いていると言っていました。
―確かにウニクムはただ苦いだけでなく、香りが複層的に感じられるところが面白いですよね。だからバーシーンで重宝されるし、人々を沼にハマらせる。
田中 私もそうだったのですが、もし初めて飲んだときに「おやっ?」と思っても、そこで苦手とはねつけずに、もうちょっと飲み進めていただきたいです。そうすれば、ウニクムの面白さや美味しさに気づいていただけるのかもと思っています。
*鹿山博康…東京・西新宿にある薬草酒を中心としたバー「Bar BenFiddich」のオーナーバーテンダー。イギリスの老舗出版社William Reed Business Mediaが発表した「2021年 世界のベストバー50」に日本で唯一選ばれた
ウニクムの原料や製造方法は?
レンドバイ 残念ながら、原料については本当に一切明かされていないんです。もちろん私も知りません。
―ひとつも?
レンドバイ はい、ひとつもです。ブタペストのウニクム工場に見学に行くと、展示室にいくつものハーブやスパイスがのったトレーがディスプレイされているのですが、「この中のどれかが使われています」という説明でした(笑)。
―徹底した秘密主義ですね。製造工程については?
レンドバイ 製造工程は、下の図の通り開示されています。
〈ウニクムの造り方〉
ウニクムの製造には、40種類以上のハーブ・スパイス、スウィートコーンから作られたアルコール、そして水が必要です。これらの原料は、2つの工程(コールドプロセスとホットプロセス)を並行して処理されます。
・ホットプロセス(蒸留)…一部のハーブ・スパイスとアルコールを加熱して蒸留することで、豊かで複雑な香りを保つ目的があります。
・コールドプロセス(浸漬)…その他のハーブ・スパイスがアルコールに漬け込まれ、ハーブの色と味を含むエッセンスが造られます。
その後、ホットプロセスとコールドプロセスを経てできたアルコールをオーク樽で混合し、約3ヶ月間熟成させます。この混合物は「ミックス」と呼ばれます。熟成が終わると、複数の樽のミックスを大きな木製タンクに移し、液体状の砂糖を加えて数日間かき混ぜます。その後、小さなオーク樽に移し、さらに約3ヶ月間熟成させます。すべての工程を合わせて、ウニクムを完成させるのに約半年かかります。
ウニクムの製造には、40種類以上のハーブ・スパイス、スウィートコーンから作られたアルコール、そして水が必要です。これらの原料は、2つの工程(コールドプロセスとホットプロセス)を並行して処理されます。
・ホットプロセス(蒸留)…一部のハーブ・スパイスとアルコールを加熱して蒸留することで、豊かで複雑な香りを保つ目的があります。
・コールドプロセス(浸漬)…その他のハーブ・スパイスがアルコールに漬け込まれ、ハーブの色と味を含むエッセンスが造られます。
その後、ホットプロセスとコールドプロセスを経てできたアルコールをオーク樽で混合し、約3ヶ月間熟成させます。この混合物は「ミックス」と呼ばれます。熟成が終わると、複数の樽のミックスを大きな木製タンクに移し、液体状の砂糖を加えて数日間かき混ぜます。その後、小さなオーク樽に移し、さらに約3ヶ月間熟成させます。すべての工程を合わせて、ウニクムを完成させるのに約半年かかります。
家飲みにおすすめのウニクムの飲み方・楽しみ方は?
田中 食事と合わせるなら、ウニクムハイボールがおすすめです。炭酸で割ることで苦味が和らぐので、ビールのような感じで飲めるんです。揚げ物やスパイス料理にも合いますよ。
レンドバイ ショットで飲むと一瞬で飲み終わるうえにアルコール度数が40度あるので刺激も強いですが、ハイボールだとゆっくり飲めて、ハーブの香りで気分もリフレッシュされるような感覚が得られます。
―炭酸で割ったり、別の飲み物にちょい足ししたりすることで、家飲みでも美味しく楽しめそうですね。ぜひやってみます! 今日はありがとうございました。
▼ウニクムの楽しみ方が満載!
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※記事の情報は2023年9月27日時点のものです。
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