【変わり種昆布締め】魚だけじゃない。肉やチーズ、フルーツも締めてみた!
お酒好きが妙に心惹かれるおつまみ「昆布締め」。昆布で鮮魚を締めるイメージですが、実は魚だけでなく、肉や野菜、豆腐などでも作れるらしいのです。そこで「これ、締めちゃう!?」というような食材もあえて昆布締めにして、昆布締めの故郷・富山の銘酒とともに楽しんでみたいと思います!
なんでも「昆布締め」にする富山県民
「昆布締め」は富山県で生まれた郷土料理。もとは、“天然のいけす”と称えられる富山湾でとれた新鮮な魚を、無駄なく美味しく食べ切るために生まれた保存食なんだそうです。
昆布で食材を挟むというシンプルな調理法ですが、昆布が食材の水分を適度に吸収することで、身が締まってプリッ!シャキッ!と歯応えのある食感に。さらに昆布の旨みや甘味、香りが加わって、食材本来の味に奥行が出るんです。
しかも富山県民は、魚介だけでなく、季節の山菜や豆腐など、あるゆるものを昆布で締めて食しているというではありませんか。それ絶対楽しい!お酒がすすみそう!ということで、早速試してみることにしました。
昆布締めにしてみる食材はこれ!
昆布締めにする食材は、すべて近所のスーパーで調達。
地元・富山では昆布締め食材としてポピュラーだという「豆腐」、「さしみこんにゃく」。野菜系では「しいたけ」と「アボカド」、肉系では昆布に挟みやすそうな「ローストビーフ」と「生ハム」。やっぱり海のものも恋しくなって富山湾の幸「ホタルイカ」。手でつまみやすそうな「カマンベールチーズ」に「うずらの卵」。そして野菜も昆布締めにできるならフルーツだって!ということで「文旦」。
昆布締めに使う昆布は、できるだけ薄くて幅の広いものがよく、磯の香りが出過ぎない「真昆布」や「利尻昆布」が向いているそうです。今回は、昆布締め用として売られていた真昆布をネットで購入しました。
昆布締めの作り方はいたって簡単
まずは昆布を柔らかくするために、日本酒を含ませたキッチンペーパーで昆布の表面を拭きます。
日本酒を含んでしっとりした昆布の上に、まずはローストビーフと生ハムを、できるだけ重ならないように敷き詰めます。
さらに日本酒で湿らせた昆布を上にのせて食材を挟み、できるだけ空気が入らないようにラップでぴっちり包めばOK。たったこれだけ! 他の食材も同じように、ひたすら昆布で挟んでいきます。
カマンベールチーズと、水分を拭きとったうずらの卵。卵が転がって昆布で挟むのに少し難儀しました。
軽くコンロであぶった椎茸。アボカドは変色止めにレモン汁をまぶしておきます。
昆布がべちゃべちゃにならないように、豆腐はしっかり水切りしてから挟みます。
この状態で冷蔵庫に入れて、だいたい3~4時間おけば完成。しっかりうまみをつけたい場合は1日くらいおいてもよく、食べどきはお好みで。
変わり種昆布締めを富山の美酒とともに
出来上がった昆布締めがこちら! 食材によって見た目に明らかな変化があるものも、全然様子が変わらないものもあります。
で、昆布締めのお供には富山の銘酒「立山」を。「愛山」という酒造好適米を100%使用した特別純米酒で、「昆布締めならこれがおすすめですよ~!」と日本橋にある富山のアンテナショップの方に教えていただいたのです。
試しにひと口飲んでみると、青りんごやマスカットのような香りがほわんと鼻に抜けてフルーティ。辛口ですが、少しとろみもあって、お米の旨みをしっかり感じます。昆布締めとのペアリングも期待できそう!
▼「酒造好適米」についてはこちら!
まずは豆腐とさしみこんにゃくの昆布締めから。こんにゃく、まず食感がすごい! プリップリ。たった数時間締めただけなのに、昆布の旨みもしっかりのっています。醤油や酢味噌をつけなくてもこのままで十分。
豆腐のほうは、昆布のおかげで余計な水分が抜けているぶん、大豆の風味が濃く感じます。これは日本酒に間違いなく合う! 昆布の風味は強すぎず穏やかな感じですが、1晩くらいおくとしっかり染みて、また印象が変わりそうです。
次は肉系。写真左の生ハムは8枚300円くらいの安価なものですが、昆布締めにすることで「ハモンセラーノ?」と間違いそうになるほど旨みが凝縮! とくに脂身部分の味わいが明らかにグレードアップしています。もちろん「立山」もいいですが、これはやっぱりワインかなー。
写真右は、元ローストビーフです。昆布締めにしたら水分が抜けて、生ハムとあまり変わらない見た目に。味や食感は、“レアめのビーフジャーキー”といった感じで、これはこれで美味しいです。
ホタルイカは、昆布締めにすることで珍味度が増して、日本酒がすすみます。ただ、ちょっと塩味や磯感が出過ぎるかな…。小さいのに味が力強いです。
これは大当たり! コリコリとした椎茸の食感に、噛むほど溢れる旨みがたまりません。しいたけってもともと味わい豊かなキノコですが、そこに昆布の旨みが重なることで、風味が倍増しています。
しいたけを少しあぶったのも、香ばしさが加わってよかったのかも。きっとピート香の強いスコッチウイスキーなんかにも合うと思います。
うまー! 濃厚ー‼ これは、ぜひ皆さまにもお試しいただきたい。一言で表すなら“旨みのクリーム”です。昆布の味が染みているなんてレベルじゃなく、昆布がアボカドに完全に乗り移っています。このクリームをお箸の先に少しすくって「立山」とチビチビやってると、時が経つのを忘れてしまいそうです。
ふだん料理を下支えする役回りの多い昆布が、ここまで前面に出てくるとは…。レモン汁をまぶしたのも良かったのかな?
カマンベールチーズは、“クリーミー”が“ねっとり”に変化。昆布の味というより、チーズ本来の旨みが凝縮されている感じ。味わい豊かな日本酒「立山」にバッチリ合います。
うずらの卵はもともと塩味がついているせいか、表面だけにうっすら昆布の風味を感じる程度。もしかしたら締め方が甘かったのかな? またリベンジしたいです。
最後はこれ、お楽しみの文旦。が…、意外やほとんど味に変化はなく、文旦は文旦でした(口直しとしてはよし)。バナナとかりんごとか、他のフルーツだったらまた違ったかもしれないので、これもリベンジ案件です。
やはり、昆布の力は偉大なり! なかには「?」というものもありましたが、ほとんどの食材は昆布の滋味を吸収し、日本酒に合う粋な酒肴に変身しておりました。
朝さっと仕込んで、夜至福の晩酌タイムをもたらしてくれる昆布締めは、まさに家飲みにぴったりの調理法ではないでしょうか。
昆布締めの昆布を再利用して、また一献
さて、昆布締めを思い切り楽しんだ後には、大量の昆布が残ります。捨てるなんてもったいないので、再利用しましょう。
さっと表面の汚れを拭いたら、出汁とりに使ってもよし。冷凍保存だってできます。
また、昆布締めの昆布を使って、さらに酒肴を作るのもおすすめです。
定番の昆布の佃煮はもちろん…、
オリーブオイルで揚げ焼きして、昆布チップスにしても。日本酒はもちろん、ビールやハイボールにも合う、後引くおいしさです。
ぜひ、昆布の旨みを余すところなくご堪能ください。
※記事の情報は2021年3月25日時点のものです。