福丸やすこ『海の見える台所』の再現レシピ《肴は本を飛び出して㉛》
福丸やすこ先生の『海の見える台所』から、ふわとろ卵の「とん平焼き」を再現! ビールにピッタリのあつあつのとん平焼きと、登場人物たちのハートフルなやり取りで、心まであったかくなること間違いなし。家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。
海沿いの街で暮らす女子中学生とばーちゃんの心あたたまる食卓。
『海の見える台所』は、ほのぼのとしたストーリーとどこか懐かしさを感じさせる絵柄で人気の福丸やすこ先生の注目作。2022年4月現在、全2巻が発売中です。
幼い頃に両親を亡くした中学生・のぞみは、海沿いの街でばーちゃん(亡き父の母)とふたり暮らし。料理上手なばーちゃんが作るごはんやおやつを食べて育ったのぞみは、家族ぐるみで仲良くしている親友のみさきと共に少しずつばーちゃんの味を覚えていきます。
1巻では、両親の死を受け入れられずにいた幼いのぞみの心を開いた広島風のお好み焼き、小さな花火大会の日に町内のみんなが持ち寄った食材で作るサラダ、遠方でのお葬式に出かけたばーちゃんのためにのぞみとみさきが作るツナときゅうりのサンドイッチなど17品が登場。
2巻には、ばーちゃんが亡き夫と恋に落ちたきっかけのコロッケ、別居中のみさきのパパが作るかつ煮弁当、おしゃれで美味しいハンバーガー屋を始めた移住者の若者が自分の家族を思い出してじ〜んとなるばーちゃんのかぼちゃ煮など19品が収録されています。
特別すぎないふだんの食事がどれもとっても美味しそう。そして、のぞみとばーちゃんが、みさきをはじめとする周囲の人たちと食を通じて交流する様子にも心が温まります。
作中では主にばーちゃんがのぞみに教えるように料理を作っていくので、まるでばーちゃんの台所で一緒に教わっているような気持ちになれるのも素敵なんですよ。
『海の見える台所』ここを再現
そのなかで、一番作ってみたかったものを再現しました。
■お品書き
- とん平焼き
好きなおつまみのひとつなのですが、自作するとどうもイマイチなことが多くて家飲みで食べるのはあきらめていました。
福丸やすこ /少年画報社『海の見える台所②』<七品目 とん平焼き>より
ということでチャレンジです。
ばーちゃんとのぞみはホットプレートで焼いていましたが、あいにくうちにはホットプレートがないのでフライパンで代用しました。特に問題なかったのでどちらで作っても大丈夫そうです。
【海の見える台所再現レシピ】とん平焼き
・豚肉スライス(一口大に切る)
・キャベツ(千切り)
・もやし(洗っておく)
・塩、胡椒
・卵(溶いておく)
【味付け用】お好みで
・ソース(たぶんお好み焼き用)
・マヨネーズ
・かつおぶし
・青のり
<作り方>
① 油を引いたホットプレートかフライパンで豚肉を炒め、火が通ったらキャベツともやしを加えて塩、胡椒で味付けし、いったん取り出しておく。
② 溶き卵を流して広げ、中央に①の具を戻して両側から折りたたむ。
③ お好みで、ソース、マヨネーズ、かつおぶし、青のりをかける。
福丸やすこ /少年画報社『海の見える台所②』<七品目 とん平焼き>より
まず、めちゃくちゃ簡単にできて嬉しい驚き! あらかじめ具を炒めてよけておくので焦らずに進行できるのがよかったです。
福丸やすこ /少年画報社『海の見える台所②』<七品目 とん平焼き>より
お供はビールで決まりでしょ! と思っていたら、作中ではのぞみが「やっぱりこれに合うのは」とご飯をてんこもりにしてとん平焼きをのっけていました。斬新! でもそれもきっと美味しいやつ。いつか体重が半分に減ったらやってみようと思います。
後半は、「おいしーい♪」と爆食いするのぞみにばーちゃんから鋭いひと言。「本当はとん平焼きのレシピもうおぼえてるんだろ?」。
「え ばれた?」と答えるのぞみは、実はこんなことを考えていたのでした。
福丸やすこ /少年画報社『海の見える台所②』<七品目 とん平焼き>より
たった5歳で両親がいなくなったのぞみがどんな思いでこう言ったのかと考えると、胸がぎゅっとなります。ばーちゃん、私からもお願い。長生きして!
こののぞみの切ない言葉へのばーちゃんの返事がこれまた素敵でした。ぜひ、本編で読んでみてくださいね。
***
ばーちゃんのおかげで、これからは家飲みでもいつだってとん平焼きが作れるようになりました。ありがたーい。
私の祖母は2人とももう会うことができなくなってしまいましたが、この漫画をひらけばもう一人のばーちゃんが優しく料理を教えてくれると気付いてなんとも嬉しくなった次第です。
※記事の情報は2022年5月6日時点のものです。
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