【現地レポート】「獺祭」がニューヨークに新工場をオープン

世界でもっともよく知られている日本酒はおそらく「獺祭(だっさい)」でしょう。国内ではデパートの酒売場で売上ナンバー1、銘酒酒場から高級店まで幅広く提供されています。「獺祭」が9月に稼働させたニューヨークの新工場をレポートします。

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アメリカCIAの要請で「獺祭」新工場を建設

「獺祭」が新工場を造ったポキプシーという町は、マンハッタンから約130km、車あるいは電車でハドソン川に沿って2時間ほど北上したところにあります。ニューヨーク州ですが緑豊かで、ワイナリーも点在する地域です。ここにはアメリカで唯一、学位を取得できる料理学校CIA(The Culinary Institute Of America)があり、将来の調理業界で活躍する若い人材が集まっているところでもあります。CIAは日本料理の研究コースを充実させていくなかで酒蔵の招致を考えるようになり、このリクエストに応える形で「獺祭」は新工場の建設を決断したのでした。
広大な敷地の入り口に「獺祭Blue」の看板があった
広大な敷地の入り口に「獺祭Blue」の看板があった
「獺祭」ニューヨーク工場(DASSAI BLUE SAKE BREWERY)
「獺祭」ニューヨーク工場(DASSAI BLUE SAKE BREWERY)は総工費100億円近いと言われている

日本の本社蔵をそのままコピー、排水処理設備に大きな投資

9月23日に開催されたオープニングセレモニーに参加してきました。あいにくの雨模様でしたが、マンハッタンから6台の送迎バスが出て、出席者は500名近かったそうです。

20人ほどのグループに分かれて工場を見学していきます。見学通路が設けられ各製造工程をガラス越しに見ることができます。麹を造ったり、発酵する醪(もろみ)を管理したり、酒を搾ったりする設備の多くは、日本から輸入したもの。山口県の本社にある本蔵をコンパクトにしてそのまま持ってきたような印象を受けました。
麹を造る麹室
麹を造る麹室。本蔵と同じように壁はステンレスで覆われている
発酵タンク
発酵タンクは本蔵で「獺祭45」用に使っているものと同じサイズ
粥状の醪を清酒と酒粕に分ける大きな圧搾機(搾り機)
粥状の醪を清酒と酒粕に分ける大きな圧搾機(搾り機)。これも日本から運んだ
瓶詰した酒を温水シャワーで加温して殺菌、その後、冷水シャワーで一気に冷やす
瓶詰した酒を温水シャワーで加温して殺菌、その後、冷水シャワーで一気に冷やす。「獺祭」はこの装置をいち早く実用化した蔵だ
排水処理施設
排水処理施設の建設には10億円かかった。米を洗った水は栄養過多でそのまま放出できない。近隣の環境保全のために獏売な投資を決断した

藍より青し、ニューヨーク生まれの「獺祭Blue」

見学が終わるとニューヨークの工場で造った「獺祭Blue」の試飲が待っていました。この工場で製造された酒はこのブランドで出荷されます。「青は藍より出でて藍より青し」から命名されたことはおわかりですね。日本で造る「獺祭」から生れたアメリカの「獺祭Blue50」が、藍よりも青くなる日が来るのかもしれません。

日本から輸入された「獺祭2割3分」と飲み比べると、「獺祭Blue50」のほうがわずかに甘い口当たりで、バランスをとって酸が多かったように感じました。
「獺祭Blue」を日本産のキャビアに合わせた
「獺祭Blue」を日本産のキャビアに合わせた
マグロの解
マグロの解体ショーには長い行列ができた
「獺祭Blue」を手に来場者の会話は弾む
「獺祭Blue」を手に来場者の会話は弾む
工場のロビーは常に大勢の訪問客で賑わっていた
工場のロビーは常に大勢の訪問客で賑わっていた

地域からの期待に応えて羽ばたく「獺祭Blue」

セレモニーは屋外に張られた大きなテントの下で行われました。心配された雨風も気になるほどではなく、お肉たっぷり、これぞアメリカの屋外パーティという料理とともに「獺祭Blue」をいただきます。BBQソースの甘さにすっと馴染んでいきました。

食事がほどよく進み、おなかがいい加減になったころを見計らって、セレモニーが始まりました。来賓の挨拶が次々に進みます。地元の方の多くが、酒蔵建設はこの地域の発展に貢献してくれると感謝と熱い期待を述べ、全面的にバックアップするとスピーチ。それを受けるように「獺祭」の桜井博志会長は、地域の一員として貢献していきたいと挨拶しました。
和服で登壇した桜井博志会長
和服で登壇した桜井博志会長。手間を惜しまずおいしい酒を造り地域の発展に貢献していきたいと挨拶
「獺祭Blue」で盛大に鏡開き
「獺祭Blue」で盛大に鏡開き。「ヨイショ! ヨイショ! ヨウショ!」と掛け声が沸き起こった
パーティ会場のフードはアメリカン
パーティ会場のフードはアメリカン。ローストしたチキンやビーフ、グリルした野菜、いくつものソースが並ぶ

ヤンキースタジアムに「獺祭Blue」が登場

翌日、日本からの参加した100人ほどはMLBニューヨーク・ヤンキースの本拠地ヤンキースタジアムに居ました。ホットドックを頬張り「獺祭Blue」を飲みながら昼間の試合を観戦します。球場内のショップでゲットしたキャップやユニフォームを身に着けて、ヤンキースモードに切り替えた人もたくさん。昨年のホームランキングのジャッジ選手の打席には注目が集まります。

けれどもこの日の目的はバックスクリーンです。そこに「獺祭Blue」の文字が浮かび上がると、球場の一部から大きな歓声が。もちろん私たちのいるブロックでした。
ヤンキースタジアム
野球ファンでなくとも一度は行ってみたいヤンキースタジアム
バックスクリーンに「獺祭Blue」の広告が輝いた 
バックスクリーンに「獺祭Blue」の広告が輝いた 

※記事の情報は2023年10月5日時点のものです。
 

  

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