枇杷かな子『ただいま。おばあちゃん』の再現レシピ《肴は本を飛び出して59》
おばあちゃんとの思い出を綴りSNSで話題となった、枇杷かな子先生のコミックエッセイ『ただいま。おばあちゃん』より、アルミホイルおにぎりとゆでたまごを再現! 家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。
たくさんの温かさと少しの切なさが彩る、おばあちゃんとの思い出。
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『ただいま。おばあちゃん』は、漫画家の枇杷かな子先生が幼い頃の祖母との思い出を綴ったコミックエッセイ。SNSなどで発表されていた作品をまとめた一冊です。
私は枇杷先生のほんわかトーンのイラストと優しい目線が大好きで、夫さんやご家族との日常のお話から創作漫画までいつも楽しみに拝読しているのですが、なかでも一番好きなのがこの「おばあちゃん」シリーズ。
枇杷先生は放課後や長い休みの間などをおばあちゃんと一緒に過ごすことが多かったようで、当時は何てことなかったかもしれないけれど、今となってはとても貴重なその時間のことを数ページの漫画にされています。
子供心に傷ついた時も寂しい時も、おばあちゃんが全力で幼い枇杷先生を愛して守ってくれていたことが伝わって来て、何度読んでも最後には決まって涙、涙。
実は私も幼い頃の放課後は共働きの両親に代わって亡き祖母に面倒を見てもらっていました。ただ枇杷先生とは違って、弟たち(私よりもさらにおばあちゃん子)もいたため、二人っきりの時間を持った記憶はほとんどありません。それでも、毎日おやつを用意してくれたり、庭で遊ぶのを見守ってくれていたりしたことはしっかりと覚えています。危ない遊びをした時は両親よりも厳しく叱ってくれたっけ…。
本書を読むと「もっと祖母との時間を覚えておきたかった」と強く思います。特に、食いしん坊すぎる大人になった今、味の記憶を取り戻したい。
その点、枇杷先生は実に細かく覚えていらっしゃいます。
夏休みの始まりに茹でてくれたカゴいっぱいのトウモロコシ、冬の寒い日にこたつで飲む外気で冷えたサイダー、幼い枇杷先生がおばあちゃんのために作ったチャーハン(作るところをハラハラと見守るおばあちゃんがかわいい)、出前のラーメンから1枚分けてくれたチャーシュー、反抗期の枇杷先生にそっと差し入れた山盛りのふかし芋&マーガリンや、お肉たっぷりのカレー、おばあちゃんと別れて自宅へ戻る時に寂しさを紛らわせながら食べたチョコなどなど、本書の中に登場するだけでもこんなにいろんな「おばあちゃんとの思い出の味」が! おばあちゃんもきっと本望でしょうね。
本書の中から、おいしそうなお話を一話ご紹介させていただきます。
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「おやつ」より
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「おやつ」より
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「おやつ」より
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「おやつ」より
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「おやつ」より
そして最後はやっぱりほんわか…。ああ、偉大なり祖母の愛。
枇杷先生のSNSには、本作に収録されていないおばあちゃんとのエピソードもたくさん掲載されています。ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。
『ただいま。おばあちゃん』ここを再現
こちらのお話から、おばあちゃんの味を再現してみます。
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「プール」より
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「プール」より
枇杷かな子 /新書館『ただいま。おばあちゃん』「プール」より
おばあちゃんが用意してくれていたアルミホイルに包まれたおにぎりとゆでたまごが何だかとてもおいしそう。大人なので、焼酎の麦茶割りなど添えてみましょうか。
◾お品書き
- アルミホイルおにぎり
- ゆでたまご
シンプル極まりないお弁当の形。なんだかワクワクします。
枇杷先生が食べたおにぎりの具は何だったのでしょうか。真夏に持ち歩くから梅干しかな。お手製の昆布の佃煮だと小学生には渋すぎる?
なんてことを考えながら作ったマイおにぎりは、梅干し、明太子、おかか&刻み茗荷&天かすでした。はい、完全に酒飲み仕様です。甲類焼酎の麦茶割りがスィーと進んじゃいます。
ゆでたまごは殻付きだったのか剥いてあったのか。優しいおばあちゃんのことだからきっと剥いてくれてあったのだと想像します。お塩はアジシオの小瓶を添えたりしたのかもしれませんね。サラダやサンドイッチにしていないゆでたまごを久しぶりに食べましたが、これはこれで潔いおつまみ。よきです。
日差しの強いプールで泳いだ後に食べるのには敵わないでしょうが、インドア派の中年酒飲みが涼しい室内でいただいても充分においしいものでした。
***
今回の再現のためにこの本を再読して思ったのは、大事な人との思い出は記録しておくにこしたことはないということ。枇杷先生のように記憶力が良くそれを物語としてアウトプットできる才能がある人は一握り。
今は手軽で便利なスマホがあるのだから、家族や友人たちとの何気ない時間を写真に撮ったり「こんな話をした」というメモを残したりしていこうと思いました。それはきっと未来の自分への贈り物、そしてあの世で待つ人たちへの土産話になると信じています。
※記事の情報は2024年9月3日時点のものです。
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