いのうえさきこ『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~』の再現レシピ《肴は本を飛び出して57》

50歳のぬか漬けライフを描いた、いのうえさきこ先生の『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~』より、かくやのこうこと切り干し大根の細巻きを再現! 家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:いのうえさきこ『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~』の再現レシピ《肴は本を飛び出して57》

ある日突然やってきた「ぬか床」がアラフィフ女性の人生を拓く前向きコミック

◾こんな本です
 
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アラフィフで独身一人暮らしのクミコは真面目な会社員。

ある日、クミコのもとに遠縁にあたる資産家のサナエおばさんから“形見分け”として立派な壺が届きます。

「すわお宝か!」と思いきや、中身はなんとぬか床。 いやいや、これはまさかの展開です。

いのうえさきこ /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第1話」より
実家の母にぬか床のことを伝えると「どういうことか先方さんに聞いとくし、とにかく毎日かきまぜとくんやでー」とのことで、おそるおそる大きな壺に立ち向かうクミコ。

いのうえさきこ /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第1話」より

いのうえさきこ /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第1話」より
ぬか床にはサナエさんが漬けたと思しき野菜が埋まっていました。

なぜこのぬか床をクミコに託したのか。サナエさんの意図はわからないけれど、クミコの心には少しずつ変化が生まれます。

いのうえさきこ /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第1話」より
そして、変わり映えしなかったクミコの毎日に、毎朝ぬか床をかき混ぜるという新しいルーティンが追加されました。

そこでクミコが思ったのは「新しいってやっぱり楽しい!!」ということ。

わかる、わかりますよその気持ち。同じアラフィフの独身一人暮らしの私めは会社勤めこそしていないものの、同じような日々の繰り返しで成長を見守るべき子どもやペットもなく、ただただ老けていくだけ。たまに植物の世話をしたり、川辺で鴨に餌やりをしたりして「あー、庇護欲が満たされた気になるわ〜」なんて思うくらい。

そんなところに言葉も通じない未知の“生き物”がやってきたのだから、生活に張りが出るってもんですよね。

クミコの場合は“ぬか子”と名付けたぬか床との暮らしを通して、周りの人たちとの人間関係が変化したり新しく生まれたりしています。

いくつになっても、新しい扉を開けばその先に楽しいこと(ばかりではないでしょうが)があるんだということに気づかせてもらいました。

更年期障害のホットフラッシュにやられつつ、ぬか床に入れる野菜を探して訪れた八百屋で女性店主に「長芋は皮むかないで漬けるといいよ」「女の子は体冷やしちゃダメよー」などと気遣いの言葉をかけてもらったクミコ。

いのうえさきこ /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第5話」より
「優しくされたらうれしい」という、当たり前だけど当たり前すぎて日常では忘れてしまいそうなことに気づきます。そして、この八百屋さんにはこの後も通うことになるのでした。

かくして、セロリに長芋、オクラ、ゆで卵、白菜(ペペロンチーノにしてた!)、アボカド、豚トロにししとうと、果敢に漬けまくるクミコに触発され、私もぬか漬けデビューを果たしました!

とはいえ、いきなり壺で育てる自信はないので、最近あちこちで売っているジッパー袋入りのぬか床でスタートです。
ぬか床パッケージ
ぬか床の中
すでに完成されたぬか床なので、野菜を用意して漬けるだけ!

私のようなズボラ人間にはありがたい限りです。しかも、ぬか床に手を突っ込んでお世話する自信がないので(手を洗うのが面倒ともいう)スプーンでぺったんぺったんと混ぜているていたらく。

それでもそれなりにおいしい漬物ができるのだから、ぬか床って本当に偉大です。

私もクミコのようにぬか床きっかけで何か新しいことに出合えますように。

『どうぞごじゆうに』ここを再現

再現レシピの1品目は、サナエさんから届いたばかりの壺に埋まっていた古漬けをアレンジした一品。

いのうえさき /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第1話」より
浸かりすぎて酸っぱくなっていた古漬けを無駄にせず使うクミコ、かっこいい!

2品目は、クミコ母からぬか子への差し入れとして届いた切り干し大根を使った細巻き。

いのうえさきこ /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第4話」より

いのうえさきこ /秋田書店『どうぞごじゆうに~クミコの発酵暮らし~第1巻』「第4話」より
ぬか漬けの先輩であるクミコ母からの助言で、ちょっと弱っていたぬか子も無事に復活したようです。
 

◾お品書き

  • かくやのこうこ
  • 切り干し大根の細巻き

『どうぞごじゆうに』再現レシピ|かくやのこうこ

かくやのこうこ
<材料>
・きゅうりの古漬け
・なすの古漬け
・みょうが
・生姜
・すりゴマ
・醤油

<作り方>
① 古漬けは適当に刻んで薄い塩水に浸けて塩抜きする。※クミコ曰く、塩分1%くらいの塩水に浸けると浸透圧の働きでちょうどいい塩加減になるそうです。
② 食べやすく切ったみょうが、生姜、すりゴマを①に混ぜ、醤油をたらす。

◾食べてみました
そのままでは顔がキュッとなるほどすっぱ辛い古漬けでしたが、塩水で塩抜きをしたらちょうどいい塩梅。まさに塩梅。ぬかの風味がほのかに残り、そこへみずみずしいみょうがとピリッと辛い生姜、そして香ばしいゴマ。これは絶妙なバランスですわ〜。

きゅうりもなすも適度な歯応えが残っているからポリポリと噛む音も楽しい。

冷酒がギュンギュン進むナイスなつまみでありました。これを冷奴や麺にトッピングしても絶対おいしいだろうな。

なお、私は高血圧の民ゆえ最後の醤油は遠慮しておきましたが特に問題なかったです。

皆様はぜひお好みで!

『どうぞごじゆうに』再現レシピ|切り干し大根の細巻き

切り干し大根の細巻き
<材料>
・切り干し大根(太め)のぬか漬け
・ご飯
・焼き海苔

<作り方>
① 切り干し大根はお茶やだし用のパックに入れて、1、2日ほどぬか床に漬ける。
② 焼き海苔(全型)を半分に切り、ご飯を薄く並べて中央に①を置き、手前から巻く。
③ お好みで食べやすくカットする。

◾食べてみました
切り干し大根をぬか漬けにするとたくあんになる。どちらも大根なので当たり前ですが、それでも「おお!」という発見がありました。

干すことで鄙びた味わいがついた切り干し大根はぬかとの相性がびっくりするほど良くて、そのままでもかなり優秀なお酒のお供になってくれました。

それを細巻きに…。食べる前からもううまいのがわかっていたのですが、やはりよい。とてもよい。はりはり、ポリポリとした食感が気持ちいいし、ご飯に味付けをしていないのでぬか漬けの風味がよくわかります。

つまみになる細巻き、会得しましたっ。

***

これを書いている今も、我がぬか子はせっせと旬のきゅうりをおいしく育ててくれています。愛いやつめ〜。これはちょっと長めに漬けて、これもクミコが作っていた「酸っぱい古漬けきゅうり入りタルタルソース」にするつもり。

ぬか床到来で我が家飲みも確実にパワーアップしました。

次は何を漬けようか、この漫画を読み返してクミコにヒントをもらってきまっす!

※記事の情報は2024年7月2日時点のものです。
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