イギリス発祥「パブ」とは? パブ文化やスナック、バーとの違いを解説します!

パブとは、「パブリックハウス(公共の家)」の略。本場はイギリスですが、現在ではヨーロッパやオセニアなど世界中にあり、その土地の文化によって概念や楽しみ方はさまざま。この記事では、世界各国&日本におけるパブの特徴、バーやスナックとの違いなどについて、世界40ヶ国200都市の酒場を旅した元バーテンダーが解説します!

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パブとは?

パブとはもともと、イギリスで発展した酒場のことで、"Public House"という言葉が縮まって「パブ」と呼ばれるようになりました。数百年にわたる歴史があり、古くから地元民の生活に欠かせない食事やドリンクを楽しむ社交場として親しまれてきました。友人や家族との絆を深める場所として、また新しい人々と出会う場所としても知られています。

パブは食事よりもお酒がメインに扱われていて、現在ではカウンターでのキャッシュオンデリバリー(注文したものと引き換えに都度会計するスタイル)が主流です。

パブの起源は?

パブの起源には諸説ありますが、一説によるとその歴史は古く、17世紀までさかのぼります。当時、イギリスの清教徒革命を指導したオリバー・クロムウェルの遠征によって荒廃していたアイルランドで、反英闘争に燃える民衆が、英国に対する抵抗の意志を共有するため、夜な夜な集会所兼宿屋に集いました。そこでお酒を酌み交わしながら謀議したのがパブ文化の始まりとされています。これがイギリス本土に伝播し、現在のパブ文化が形成されたと言われています。

本場イギリスのパブの特徴は?

イギリスのパブ
イギリス国内には、約4万7000軒のパブが存在すると言われています。

パブの代表的な飲み物はやはりビールです。ビター、スタウト、ペールエールなど数種類のスタイルが置いてあることが多く、「パイント(Pint)」という単位で注文します。パイントにはイギリスのUKパイントとアメリカのUSパイントの2種類があり、イギリスの1パイントは568mlを指します(アメリカの1パイントは473ml)。基本的には1パイントの大きいグラスでオーダーしますが、そこまで飲めない場合、またはいろいろな種類を楽しみたい場合はハーフパイントでも注文できます。
 
フィッシュアンドチップス
フィッシュ&チップス
提供される食事はフィッシュ&チップスなどの伝統的なイギリス料理が中心です。また、パブは元々労働者階級も利用する社交場だったため、ハンバーガーやシェパーズパイ(ラム肉や牛肉と、マッシュポテトを使ったパイ)といったボリューミーなフードメニューも多いです。

また、日曜日限定メニューである「サンデーロースト」もパブの定番です。サンデーローストとは、ローストした肉にポテトや野菜などが添えられた料理のこと。牛肉がメジャーですが、お店によってはポークやラム、チキンなどで出されることがあります。「日曜日に料理をしなくてもいいように」という理由から、一皿はかなりボリュームがあることが一般的です。

その他の国のパブの特徴は?

アイルランドのパブ
イギリス以外では、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドのパブが有名です。イギリス入植の歴史があった国には、パブ文化が色濃く残っています。各国のパブの特徴を以下で解説していきます。

・アイルランド
アイリッシュ・パブは木製の内装や緑色の装飾が特徴的です。代表的なビールはギネスのスタウトビール。「ソーセージ&マッシュ」という伝統料理が有名で、文字通りマッシュポテトとソーセージだけのシンプルなメニューです。店によってそれぞれのこだわりがあり、ビールのお供に最適です。

・オーストラリア
オーストラリアでは「パブ(Pub)」のほか、「ホテル(Hotel)」や「タヴァーン(Tavern)」とも呼ばれており、定番のオージー・ビールを中心に、クラフトビールのラインナップも豊富で、10種類以上のビールタップがあるお店も少なくありません。

グラスのサイズはパイントの他にラージやスモールなどがあり、地域によってラージはスクーナー、スモールはミディやポットなど、異なる呼び名で呼ばれています。

また、オーストラリアはワインの生産も盛んなので、ワインを扱っているパブも多くあります。オーストラリアのパブ料理の定番は「オージービーフステーキ」。たくさんのフライドポテトをつけ合わせたボリュームのあるビーフステーキを楽しみます。また、国民食であるミートパイも古くから人気のあるメニューです。

・ニュージーランド
オーストラリアに似て、クラフトビールが盛んです。また、ニュージーランドもワインの生産が盛んなので、ワインを出すパブも多くあります。国民食である羊肉を使った料理が多く、沿岸沿いではシーフード料理が出されることも多いです。

パブとバーの違いは?

シェイカーからグラスにお酒を注ぐ
イギリス発祥の「パブ」とアメリカ発祥とされる「バー」。

それぞれに明確な定義があるわけではないですが、バーは「お酒を飲むための場所」、パブは「お酒を飲みながら多目的に集う建物のこと」を指すことが多いようです。

バーはアルコールを提供する主要な場所としての役割が強く、特にアルコール度数の高いお酒をベースにしたカクテルを提供することが多いのが特徴です。一方、パブは地域社会の中心としての役割を果たし、社交場としての側面が強いです。

同じ「酒を飲む場所」ではありますが、ルーツや提供されるお酒の種類も違いがあります。

日本におけるパブとは?

日本における外国の文化を取り入れたパブは、特に都市部に多く見られます。イングリッシュ・パブやアイリッシュ・パブと称されるこれらの店舗は、外国の文化を体験したいという日本人のニーズに応える形で増えてきました。

また、日本独自の解釈により、パブと称しても本来の意味とは内容が大きく異なる場合もあります。例えばフィリピン人が接客をするフィリピン・パブや、ダンスやショーをメインとするショー・パブ、カラオケができるカラオケ・パブなど、さまざまな業態も存在しています。

日本におけるパブとスナックの違いは?

日本の飲食文化の中で、「スナック」と「パブ」は類似した存在として捉えられることが多くあります。しかし、これらは実際には異なる文化背景やサービスを持っています。

スナックは「スナックバー」の略で、女性店主がカウンター越しに接客する形態が一般的です。パーソナルな接客が魅力の一つで、会話やカラオケと一緒にお酒を楽しみます。

一方、日本のパブはあらゆる形態を持ち、本場の雰囲気を追求したものから、日本独自の解釈を取り入れたものまでさまざまです。本場の雰囲気を模したパブは、外国の文化や食事、飲み物を楽しむ場所として設計されており、コンセプトが明確です。また、パブではスタッフや客同士でのカジュアルな会話が楽しまれています。

世界中でパブを楽しもう!

パブで乾杯
パブは、イギリスをはじめとした多くの国々で親しまれている文化の一つです。その発祥や特徴、各国独自のスタイルを知ることで、さらに深く魅力を感じることができます。また先述の通り、日本におけるパブやスナックも、独自の文化や歴史を反映した形で存在しています。

それぞれの特徴を知っておけば、各国のパブをまわる時も理解が深まって楽しいはず! ぜひさまざまな地域のパブを開拓してみてくださいね。

※記事の情報は2023年8月25日時点のものです。
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