日本酒がよりおいしくなる酒器選びとは?
日本酒を飲むときの「おちょこ」や「ぐい呑み」、どんなものを使っていますか? 実は日本酒は酒器の形や素材によって驚くほど味が変化するお酒なんだとか。より美味しく日本酒を味わう酒器選びを、ミシュラン1ツ星を獲得している和食の名店「ふしきの」さんに教えていただきました。
日本酒の味は酒器の形で変化する
お酒に合わせて酒器を選ぶという楽しみ方はワインのグラス選びが良く知られていますが、日本酒はワインとは違う部分があります。
ワインの場合ぶどうの品種によってグラスを選びますが、日本酒や米、酵母、醸造方法など様々な要素があるので「純米酒ならこの酒器」というような選び方は難しいのです。ただ、酒器によって日本酒の味は大きく変わるので、お酒の種類ではなく「どんな楽しみ方をしたいのか」によって酒器を選ぶことをおすすめしています 。
――日本酒の酒器を選ぶときのポイントは?
日本酒の酒器は形状よって味が変化します。当店でも形の違う3種類のオリジナル酒器を作っていて、飲み比べを楽しんでいただいています。
お酒の特徴を引き出す、味のバランスを調整するなど、目的によって選ぶ器が変わってきます。 例えば、火入れしていない生酒を、この3つの器で飲み比べしてみるとその違いは歴然です。
3つのタイプの酒器で日本酒を飲み比べ
お猪口のような飲み口がすぼまったCタイプの酒器で飲むと、香りやアルコール感が封じこめられて、生酒本来の旨味や甘味がしっかりと感じられます。
そして、中間のBタイプの酒器で飲むと、生酒の風味は残しつつ、アルコール感もやや抑えられて飲みやすくなります。
―――確かに、同じお酒のとは思えないほど味わいが変化しますね。
お店でも3つの酒器で「飲み比べ」をしていただいているのですが、味の違いには驚かれますね。
たとえば「淡麗辛口」の味の特徴を生かすなら飲み口の広いAタイプ、辛口の印象を抑えて飲みやすくしたいなら、中間のBタイプという選び方になりますね。
味の特徴を際立たせるか、抑えるか、という調節ができるので、1本のお酒で変化をつけることも可能です。濃淳なタイプのお酒を食事と合わるときは、Aタイプの器でスッキリ味にし、食後につまみと合わせて少しずつ飲みたいならCタイプで旨味をじっくり味わう、といった楽しみ方もできると思います。
――素材の違いも味に影響がありますか?
飲み比べ用の酒器はいろいろ試した結果、釉薬を塗っていないタイプ(素焼き)のものにしていますが、素材の違いで味わいの印象は多少異なります。しかしながら、形によって味わいが違うことは共通していますので、お好みのものを選んでいただいた大丈夫です。
日本酒の温度や香りに合わせて酒器を選ぶ楽しみを
冷酒でも熱燗でもその温度をキープしたいなら熱伝導の低い素材、漆や陶器などがいいですね。素材に合わせて形状も味の特徴に合わせたものを選べば、よりいい状態で楽しんでいただけると思います。
一般的に冷酒の場合は、甘味を比較的抑えられ、よりすっきりとした味わいになるので、それを生かすなら飲み口の広がったAタイプ、甘さを感じたいなら口のつぼまったCタイプの形がおすすめです。一方お燗すると甘味を強く感じるようになります。
また、酸味については、冷酒の場合、「リンゴ酸」や「クエン酸」などを強く感じるため、よりドライな印象になりますが、温度が上がるにつれ「乳酸」や「コハク酸」などを強く感じるため、よりまろやかな味わいになります。
お燗によって強くなった甘味や旨みを際立たせたいなら、中間のBタイプを、すっきりと楽しみたいなら飲み口の広いAタイプがおすすめです。
―――最近人気のワイングラスで日本酒を飲むというスタイルはどうでしょうか?
ワイングラスは、香りがこもりやすい形状なっているため、香りをより楽しむことができるという特徴があります。華やかな香りがあるタイプの日本酒にはぴったりだと思います。
――自宅で楽しむなら何から揃えたらいいのでしょうか?
素材は問いませんが、ご紹介した3タイプに近い形のものであればオススメです。もし近い形のものがない場合でも、違った形のものを複数用意すれば、味わいの違いを楽しむことができます。
いろいろな形の酒器で日本酒を飲んでみると、自分がどんな味わいが好きなのかもわかってきて酒器で好みの味に調整することもできるようになります。日本酒の世界観が変わると思いますので、ぜひ試してみてください。
この方にお聞きしました
宮下祐輔さん
神楽坂の和食店兼ギャラリー「ふしきの」店主。日本ではじめて和食と日本酒のペアリングを提案。ミシュラン1ツ星を獲得している和食の名店。
※記事の情報は2019年11月29日時点のものです。
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