カワウソ『酒肴ごよみ365日』の再現レシピ《肴は本を飛び出して㉞》

写真家・萬田康文さんと大沼ショージさんのユニット「カワウソ」による、贅沢なおつまみ本『酒肴ごよみ365日』より、夏の晩酌にぴったりな3品を再現! 呑兵衛好みの素材合わせの絶妙さに、思わず唸ってしまうかも。家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:カワウソ『酒肴ごよみ365日』の再現レシピ《肴は本を飛び出して㉞》

ふたりの写真家による四季折々のつまみで365杯飲みたくなる!

◾こんな本です

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『酒肴(つまみ)ごよみ365日』は、フリーランスカメラマンとして雑誌や書籍などで広く活躍する写真家・萬田康文さんと大沼ショージさんのユニット「カワウソ」(※)による、おつまみ写真集&ミニエッセイ&レシピ本という盛りだくさんな一冊。美味しいものとお酒、旅を愛するおふたりが仕事やプライベートで出合った料理や食材を日々のつまみに仕立て、日めくりのように365品(!)を紹介されています。

※「カワウソ」はおふたりのアトリエ兼写真事務所の名称でもあり、不定期で料理イベントも催しているのだそう。い、行ってみたすぎる。

酒飲みなら見過ごせないタイトルにまず惹かれ、ページをめくるとほぼ全面の大きな料理写真が目に飛び込んできました。

カワウソ /誠文堂新光社『酒肴ごよみ365日』より
「さぁ、今からこれで飲むぞ!」という飲み手目線のアングルが最高〜〜〜!

ごくりと喉を鳴らしつつさらにページを進めれば、魅力的なつまみが次々と出てくる出てくる止まらないやばい。

いくつか抜き出してみましょうか。

◎1月1日 記憶をたぐりながら作る実家の雑煮
◎3月2日 桃の節句前後に出回る蛤を使ったパスタ
◎5月13日(母の日)昔懐かしい母の味・牛こまオムレツ
◎7月15日 夏の日陰の濃青色を映したようなブルーベリーのおつまみ
◎9月28日 温かいつまみが恋しくなり、里芋とブルーチーズのグラタン
◎11月8日 前夜の常夜鍋で育てた出汁で豚づくしリゾット
◎12月31日  新年の旨い酒を願いながらの年越し蕎麦

このような品々が大きな写真と小さな物語で紹介されています。季節を反映したもの、思い出の味、萬田さんが仕事で通ったイタリアで覚えた現地の料理、島好きの大沼さんが好む沖縄の郷土料理、市販品にちょっとひとひねり加えた一品などなど、まさによりどりみどりなつまみの宝石箱! 
 

カワウソ /誠文堂新光社『酒肴ごよみ365日』より
ただのハムがこんなにも美味しそうに見えるなんて! 
 

カワウソ /誠文堂新光社『酒肴ごよみ365日』より
料理撮影も多いおふたりの素敵な写真は、眺めているだけでも酒のお供になります。

引用画像ではトリミングしていますが、写真の下には簡潔なレシピもあり、一部の料理は巻末に詳しめのレシピも掲載。ほとんどが「ちょっとやってみようかな」と気軽に再現できそうなお手軽レシピなのもありがたい限りです。

前書き「呑みはじめに」の中で萬田さんはこう書いておられます。
読者のかたがたが、作ってみようと思われた時のためにメモ程度のレシピをつけているが、基本はフリースタイル、アドリブ酒宴劇場。いい加減に、いい塩梅で。上手くできてもできなくても、つまみ料理は、ちょっとばかりユルい方が心楽しいはず。

カワウソ /誠文堂新光社『酒肴ごよみ365日』[呑みはじめに]より
ですよね、ユルくていいんですよね、と膝をパンパン打ちたくなる嬉しいお言葉。

その言葉を胸に、いざ、再現チャレンジ!

『酒肴ごよみ365日』ここを再現!

8月の31品の中から、迷いまくって選んだ3品を再現してみました。

暑い日に冷たいお酒と共に味わいたいものばかりですよ〜。

◾お品書き

  • ズッキーニとリコッタチーズ
  • ブロッコリーの茎チャンジャ炒め
  • アクアサーレ

【酒肴ごよみ365日再現レシピ①】ズッキーニとリコッタチーズ

ズッキーニとリコッタチーズ
夏野菜としてすっかりおなじみになったズッキーニのつまみ。ラタトゥイユなど加熱して食べることが多かったので、生のまま食するこのレシピが気になりました。
 

カワウソ /誠文堂新光社『酒肴ごよみ365日』[8月2日 クールダウン]より
<材料>
・ズッキーニ
・リコッタチーズ
・レモン汁、塩
・オリーブオイル
・黒胡椒

<作り方> ※本編のレシピを元に、筆者が一部追記などをしています(以下同)。
① ズッキーニはピーラーで縦に薄切りにし、レモン汁と塩各少々で揉み10分おく。水気が多いようなら軽く絞る。
② ①を皿に盛り、リコッタチーズをほぐして混ぜ、オリーブオイルと黒胡椒各適量をかける。

◾食べてみました
塩もみズッキーニが爽やかで美味しい! ツルッと滑らかな口当たりで、レモンの酸味が青っぽい味を調和してくれています。そこにミルキーなリコッタチーズというのが、なんとも合いますね〜。とてもシンプルなレシピなのに気の利いた前菜っぽくなって嬉しい驚きです。たまたま2色のズッキーニが手に入ったのでミックスしてみたら色合いもかわいくなりましたよ。冷蔵庫でキンキンに冷やすと旨さひとしおでした。あ、もちろんロゼワインも忘れずにね。

リコッタチーズが近所で買えなかったため自作に挑戦してみたのですが、これまた簡単で美味しくてびっくり。材料は、牛乳と塩、レモン汁だけ。用具も鍋とザル、キッチンペーパーで間に合いました。水切りに2時間ほどかかるので、そこだけご注意くださいね。「リコッタチーズ 牛乳」などで検索すると作り方が出てきます。気になる方はぜひチェックしてみてください。

【酒肴ごよみ365日再現レシピ②】ブロッコリーの茎チャンジャ炒め

ブロッコリーの茎チャンジャ炒め
ブロッコリーの主役である“森”の部分ではなく茎を使うのが斬新! いつもは茹でてマヨネーズをつけるだけだったあの子が主役になる日が来ましたっ。
 

カワウソ /誠文堂新光社『酒肴ごよみ365日』[8月5日 胃と胃]より
<材料>
・ブロッコリーの茎
・チャンジャ
・ごま油

<作り方>
① ブロッコリーの茎は皮を剥き、長さ4cm、幅2cmほどの拍子木切りにして歯ごたえが残る程度に茹でる。
② ごま油大さじ1でチャンジャ小さじ1を炒め、香りが出たらブロッコリーの茎と炒め合わせる。

◾食べてみました
なるほど、これは茎が正解です。森部分だとモシャモシャした食感がちょっと邪魔になるかも? ハリッとした茎だけを潔くパンチの効いた味付けにしたのがとてもいい。チャンジャもそのままつまむか豆腐にのせるくらいしかやったことがなかったのですが、調味料的に使うとこんなにいい立役者になるんですね。芳醇な純米酒にかちわり氷を入れてお供にしました。辛さでヒーッとなった舌に、冷えひえの酒が心地いいったら!

酒肴ごよみ365日再現レシピ③】アクアサーレ

アクアサーレ
寡聞にして存じなかったイタリアの料理。パンを冷水に浸すというちょっと背徳感のあるレシピに惹かれました。
 

カワウソ /誠文堂新光社『酒肴ごよみ365日』[8月28日 水と塩]より
<材料> ※詳しい分量は本の巻末をご参照ください。
・ハード系パン(一口大にちぎり、ザルに干して乾燥させておく。私はバゲットを使用)
・トマト
・キュウリ
・赤玉ねぎ
・冷水
・オリーブオイル
・岩塩
・オレガノ

<作り方>
① トマトは一口大にカットし、きゅうりは皮を剥き3cm長さに切ってめん棒などで叩き軽く潰す。赤玉ねぎは薄切りに。
② ボウルにパンと①を混ぜ、冷水、オリーブオイル、岩塩、オレガノを加えて和え、汁ごと器に盛る。

◾食べてみました
撮影後にもっとしっかりパンに水気を吸わせていただきました。なるほど、これは食欲のない時でも(そんな時ないけどね私は)するりと食べられますね。「ダシ」的なものを加えていないのにしっかりと旨みがあるのに驚きました。トマトのおかげかな。そのトマトと相性のいいオレガノの爽やかな香りも効いています。きゅうりのポリッとした噛みごたえや赤玉ねぎのシャキシャキ感も欠かせないアクセント。とにかく具のバランスが絶妙です。白ワインを大きなグラスにたっぷりと注いでおいたのが正解でした。

そして、食べ余した分を冷蔵庫にキープして翌日に食べたのですが、これまた潤びたパンが美味しくて。次からわざと多めに作って“2度美味しい”をやろうと決意しました。

***

たった3品を作ってみただけですが、「これは、本当に、酒飲みが作った酒飲みのための本だ」ということを改めて実感しました。

呑兵衛が好む素材合わせの絶妙さに唸らされ、作業手順の少なさと分量が多少ぶれても味が大きく損なわれないであろう安心感が「またやってみよう」という気にさせてくれます。次は何を作ろうか、はやる気持ちを抑えて原稿を書きました。狙っているのは、「セパレートう巻き」と「桃とルッコラのサラダ」です。これもそそられるでしょ?

そうそう、最後に嬉しいお知らせです。この本の続編となるパスタ本が9月に発売になると聞きました。きっとそれも間違いなく、飲ませる一冊ですよね。楽しみ〜!

※記事の情報は2022年8月2日時点のものです。
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