井田千秋『家が好きな人』の再現レシピ《肴は本を飛び出して53》

井田千秋先生の『家が好きな人』より、喫茶店のモーニングを再現! 本編でのお供はコーヒーですが、今回は黒ビールとともにモーニングメニューを楽しみます。家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:井田千秋『家が好きな人』の再現レシピ《肴は本を飛び出して53》

読めば自分の家をもっと愛でたくなる、5軒の家の小さなお話。

◾こんな本です

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優しいタッチと淡い色合いが特徴的なイラストが大人気の井田千秋先生。書籍の挿絵や装画を多く手がけられていて、漫画を描くようになったのは近年になってからなのだそう。

本作は、タイトルの通り「自分の家が一番好き」という5人の女性の家とそこでの過ごし方を描いたコミック。どのページをめくっても緻密に描かれた絵が目に飛び込んできて、ほわ〜っと見惚れてしまいます。

後書きによると、井田先生は「不動産屋のチラシの間取り図に、家具を描き入れて遊ぶ子供でした」とのこと。「空想の間取りに家具を配置して、そこに住む人をイメージする」という幼い頃の遊びの延長線で今のような絵を描いているように感じているのだそうです。年季の入った“家好き”の先生だからこその、リアルなようでファンシーな家の絵とお話なのだなと思いました。

窓からイチョウの木が見える部屋に住むササさんは朝の光がたっぷり入るから朝食の時間が大好き。

居間の中心に鎮座したこたつに吸い込まれがちで、押し入れをベッドに改装しているカエさんのお部屋はちょっぴり昭和テイスト。

カエさんのお向かいに住んでいるナナコさんは映画愛好家で、ちょっとだけ非日常感のあるインテリアの中でおしゃれなロープを着て鑑賞するのがお楽しみ。

作家のミドリさんは書斎にもベッド周りにも本がいっぱいで、真夜中にかわいいテーブルを置いたベランダで甘〜いココアを飲んで執筆の気分転換をはかります。

一人暮らしを始めたばかりのアキラさんは、少しずつ家具やうつわを揃える楽しい時期。

派手な出来事が起こるわけではないけれど、いつもの空間で自分が喜ぶことをしてご機嫌になる5人を見ていると、こちらまでほんわかとした気持ちになります。「家って、住む人が作るんだ」という当たり前のことを改めて実感。

私はこの人たちほど自分の家に愛を持っているだろうか。

…残念ながら答えは否。(長年汚部屋でちょっと前に普通部屋になったダメ人間なのです)

私なりに家を好きになるにはどうしたらいいのか、何を求めているのか。

茫漠と暮らす日々の中で考えずにいたことに向き合うきっかけになりました。

『家が好きな人』ここを再現

作中には、さまざまなごはんやおやつが登場しますが、なかでも私がぐいっと目を惹きつけられたのが「1軒目 ササさん宅」のワンプレートでした。

井田千秋 /実業之日本社『家が好きな人』「1軒目 ササさん宅」より
「食べることが好きでできるだけ家にいたい」というササさんが休日に作る「朝のパン」は、ポテサラチーズトースト(これがメインで登場)、ロールパンサンド、しょっぱい&甘いのハーフトーストなど、どれもとても美味しそう。

─井田千秋 /実業之日本社『家が好きな人』「1軒目 ササさん宅」より

─井田千秋 /実業之日本社『家が好きな人』「1軒目 ササさん宅」より
チーズの焦げ目がたまらんやつですね!

その流れで「ときどき、気合を入れて喫茶店のモーニング」紹介されているワンプレートを再現してみました。

主人公のササさんはコーヒーを添えていますが、私はクラシカルな喫茶店ぽく小瓶ビールを合わせた酒飲み仕様です。
 

◾お品書き

  • 喫茶店のモーニング(ピザトースト+コールスロー+ゆで卵)

『家が好きな人』再現レシピ|喫茶店のモーニング

喫茶店のモーニング
<材料>
・食パン
・ピザソース
・とろけるチーズ
・ベーコン(スライスなら短冊切り、ブロックなら拍子切りにする)
・ピーマン(輪切りを半分にカットする)
・コールスロー(市販のお惣菜)
・ゆで卵

<作り方>
① ゆで卵を作る。鍋に卵が浸かるくらいのお湯を沸騰させ、冷蔵庫から出したての卵をそっと沈める。中火で10分前後煮て、冷水にとり冷ましてから殻を剥く。
※写真のちょい半熟は9分で引き上げたもの。お好みで加減してください。
② 食パンにピザソースを塗り、チーズを全面に薄く散らして具のベーコンとピーマンを好きなだけのせてトースターで軽く焦げ目がつくまで焼く。
③ 一度取り出し、さらにチーズをのせてからチーズが溶けるまで焼く。
④ 小鉢に盛ったコールスロー、半分にカットしたゆで卵と③をお皿に盛り合わせる。
※ゆで卵はお尻の方を少しカットするとお皿の上で転がらず安定します。

■食べてみました
ふだんの朝ごはんにするにはちょいとお手間入りなピザトースト。イラストを参考にちょっと贅沢して買ったブロックのベーコンをカットするときはなんとなく誇らしい気持ちで鼻の穴がふくらんじゃいました。

いつもならしない二度分け焼きなんかもしちゃって、ササさんが「達成感が二割増し」という気持ちがわかりますー。でもその分おいしさも二割、いやもっとマシマシ。

二層になったとろとろチーズの中に、ほんのりしょっぱいベーコンと焼けて甘みが出たピーマン、そしてサックサクのトースト。 うー、ピザトーストを発明した人に向けて乾杯したいくらいおいしー。

熱々のところにですね、いい感じに冷やした黒ビールの小瓶なんか添えちゃってゴキゲンな朝です(ちゃんと朝に再現したのです)。

ビターな黒ビールが非日常の朝を演出してくれて、これはよいものですなぁ。 喫茶店のモーニングを再現して朝ビール、ハマるかも!

***

最後にササさんのお部屋をちょっとだけご紹介。

─井田千秋 /実業之日本社『家が好きな人』「1軒目 ササさん宅」より
ベッドと窓の隙間の読書スペース、ナイスアイデアですね。うちも一人がけソファーの位置に迷っているので参考にしたいです。

─井田千秋 /実業之日本社『家が好きな人』「1軒目 ササさん宅」より
床に本が積まれていても服が脱ぎっぱなしになっていてもなんかかわいい。井田先生の描くおふとん(結構登場します)はふっかふかでとっても気持ちよさそうなんですよね〜。

※記事の情報は2024年3月5日時点のものです。
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